にっき「研究計画(笑)」
Try to learn something about everything and everything about something.
昨日も今朝も完全に死んでいた。アトラクタ・オフトゥンを脱出するエネルギーがない。昨日は何故か(お休みになった原因が消失したので本当に何故かとしか言いようがない)お休みであったが、進捗がさっぱりだった。日記をサボるほどには。
午後は仕事を休んで某大学院の説明会に行ってきた(家からは出ていない)。まず全体説明会で某キャンパスの自由さと学問融合について説かれた。最初に書いたのはその時引用された諺のような何かである。訳せば「万事に通ずる一事を知り、一事に通ずる万事を知れ」こんなところだろうか。一方で日本企業の文化は後者から入る「一芸に通ずれば多芸に通ずる」が、大学院は前者から入りつつ両方を大事にしたいのだという。これは中々刺さった。
その後、個別会で2人の先生とお話をすることができた。今回の知見は、具体的な研究手法を見ようと思えたことかなあ。他の先生もちゃんと見なきゃという気持ちも湧いた。
1人目の先生は物理とデータ解析(including機械学習)で脳科学を斬る、あるいはあらゆるデータ解析に通じる手法を求めるというのを掲げていて面白そうだったのだが、「脳科学したくて」と言ったらなんか違うかもしれんと言われた。物理とデータ解析で斬れそうな対象を探しているだけで、脳が本業ではないということらしい。基本的には脳科学者とかと共同研究という形で、データ解析をお手伝いするのだという。だから自分で仮説やモデルの構築などをしているわけではないと。
具体的な理論のお話を一つ聞いた。脳が何かを認識する過程は、神経の作動状況がある一点に収束していくことで表現されるという仮説がある。一方、物理学の知見で、系において近い位置にアトラクタが何個かあるとき、それらの中心にアトラクタが発生することが分かっているらしい。それで、複数のアトラクタ(ex.Aくんの顔、Bくんの顔)の中心にできたアトラクタがそれらを包括する上位概念のようなもの(ex.人間の顔)を示すのではないかというのだ。自分としてはやや疑心暗鬼ではある。そうでなくても説明が付くのではないかと思っているので。これはサルの脳活動を測って実験されたらしいのだが、被験猿くんの脳が人間の顔の中でも特によく見かけるおっさん(=教授)の顔だけを区別してクラスタリングしていたというのが小ネタとして添えられていた。
本筋からはやや関係ないが、「考えてみたモデルが合っていませんでした」という結果は論文として共有されないという話があった。成果ではないかららしい。同じ轍を踏まないでくださいねという忠告のような意味合いのものは論文ではない形で共有するのだろうか。
2人目の先生は計算神経科学の理論家で、かなり方向性が合っていた。DeepLearningは勿論脳科学を参考にして作ったのだけど今や実在の脳とは似ても似つかなくて、まあそれはそれで性能は出るんだけど、これは最早人間の模倣ではなくて何か別の統計技術だね、でもそうじゃなくて私は人間の中身が知りたいんだよという方向性だ。でも、逆に神経のモデルらしきものを作ってみて機械学習のように何かタスクをやらせるというのが脳機能の理解に役立たないかなあと思っているらしい。一方で、隣にはガリガリ脳細胞をいじってラベルを貼って逐一調べている実験屋もいる。
ここで意識したいのは、夢というか野望というか目標が同じにしても、切り口は色々あるよということだ。今見えているものを机上で見つめるか、見えていないものを実験で見つけに行くか。やり口として自分に向いているものを探すことが大事だ。ただし、実験屋になると実験以外のことを考える自由が奪われるよというコメント付きで。実験屋は1プロジェクトを完遂するまで手が離せない一方で、理論屋はふらふらといろんなことに手を出しても許されるのだという。
でも今のところ神経科学なんも分からないんですよね、と零すと面白いことを言われた。一度コンピュータ科学をやったのは有利に働くはずだ。脳機能を知りたいならむしろ一旦実験屋に行って学んだ方が良くて、どこかで実験屋から離れて理論屋になるのが最速最強のルートであると。これは何とも言えない話である。まず人生プランとして(今の視座からは)壮大すぎる。本当に研究者になりたいんですか?という問いには決着がついていない。それに、一旦自分が本当にやりたいことから外れるというのはちょっと危ない選択なのではないか、というのも当然ある。
「まあ、考えが合う先生をちゃんと探した方がいいですね」と纏められる。「計算神経科学者って絶滅危惧種でして、日本には数えるくらいしかいないんですよ。東大しか調べられてないって言ってましたけど、他にいたかなあ…そうだな…沖縄大学院の深井さんは見ました?」変化球すぎて宇宙猫になった。待て待て、それは話が急すぎるぞ。面白そうだけどさあ(笑)。
ごちゃごちゃと話題が行き来したが、とりあえずこの先生のところに改めて見学に行く約束をして、他の先生ともちゃんとお話したいねということを考えつつ、お開きになった。まだまだ考えるべきことがあるな…。「人生が左右されますからね、よく考えましょうね」仰る通りです。今こそ行動せねば。明日某先生にメールしよ。おわり。